2006年6月24日 Fiction
エクサ。僕の標。僕を僕たらしめる証拠。
エクサが現れて初めて、僕は、僕がエクサから産まれたことを知った。
僕がエクサの生誕に深く関わっていることを悟った。

エクサがいなくても僕は存在できる。僕がいなくても同様の結果はエクサに引き起こされる。
普段、人の目には触れないけれど、そこには確かにエクサがいる。
僕はエクサ以上に見えにくい。そこに他意は無い。僕はエクサよりも少しばかり小柄な体格なのである。
耳を奇支(そばだ)てても聴くことは出来ない。エクサや僕、それに他の概念たちが求められる“しめやかさ”は、しかし、しばしば黙殺の憂き目を頂戴する。雑踏に放り込まれる瞬間。明白を生み出す代償。全ては音の殺がれた至美の追求に奉げられる。

僕の出来ること全てを駆使しても、あるいはエクサの長い腕を目一杯に差し伸べたとしても。間を埋める輩は、微笑ましいことに僕たちを知覚してくれた宇内を、“しめやか”に包み込むだけ。
また何処かの四海(あるいは僕の)、妄覚めいた呟きに、僕は耳を傾けた。

「嫉視なるエクサ。前途は遼遠なれど。今は薫化に瞑り」

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