ボクが走るのは、ここに置き去りにしないといけないものを、より等閑にしたいからでは、もちろんない。
ボクが走るのは、これから手を振るもの同士関わることが、無駄に思えて仕方がないからでも、おそらくはない。
ボクが走るのは、一見して鏡写しとしか信じられないあの幾多の光景のその向こう側にすこしでも早く着きたい――その意味だけを知りつつ自分を急かしている――そんなわけでも、やはりない。

結局、ボクは走っているだけである。

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