目を閉じたそんなことくらいで、確かにここに浮かんでいたはずの光景は失せた。そそくさと、雪がぱらつきながらそうする程度の長さだった。
形のないものに形を与える力は、僕にもある。行使するタイミングが難しい。すべてを網羅すればよい。無理だ。
空間のあちこちから手が伸びている。彼や彼女、もしくは雄雌の差し出す手中には、この世のありとあらゆる秘密が握られている。大暴露大会だ。
一つ一つは拾っているはずなんだ。誰とも知れない。あるいは手渡している。手と手同士キャッチボールの要領で行き来する。
何かが扉を叩いた。
コメント